2014年04月01日
しかし敵もさるもの
知り合いが勤め先を辞めた。これまで従事していた広告業とはまったくの畑違いである料理人を目指すのだと言う。
僕は最初その話を聞いて、ちょっと無謀ではないかと思った。
しかし当の本人はへっちゃらで「まずは皿洗いからスタートです」なんて言って笑っていた。彼は二十七歳。将来についてまだまだ色々な選択肢が残されている。若いってそれだけで武器なのだ如新集團。新しい明日を思う彼の表情はとても眩しく、僕は羨ましかった。
彼と別れて、一人街を歩いた。そして自分が二十代だった頃に一体どんな選択肢があったのかを考えてみた。
人に誘われて劇団に入り、言われるままスタッフになり、連れられてイベントの仕事を始め、勧められるまま今の仕事に落ち着いている。考えれば考えるほど流れ流されだ。他人任せも甚だしい。
それでも当時は色々な選択肢があったはずだ。あったのだろう、多分。しかし結果的には何一つとして自分で選んでいないように感じる。そして気が付けば僅かに残っている選択肢だって少しずつ消え始めている。僕はそういう年齢に達しているのだ。
目の前に牛丼屋の看板が見えた。そう言えば腹が減っていた。そんな訳で昼食は牛丼に決めた。僕がする選択などこの程度ばかり。本当にこんな事でいいのだろうか?
昼と時間がずれていたので牛丼屋の店内はがらがらだった。客はと言えば、カウンターの対面に座っているおじさんだけだった。
僕が注文するメニューは決まっていた。「大盛り、卵、味噌汁」の三品だ。最近ではカレーを始め、牛丼店には色々なメニューがあるけれど僕は昔からこれを頼む。
店員は順番的におじさんの注文を先に取った。おじさんは「大盛り、卵、味噌汁」と言った。店員がそれを繰り返した。注文がまんま被った。後に僕が同じ注文をすると、店員は「都合二つ」と言った。なんだか自分の分が略されたようで悔しかった。見るとおじさんは得意顔をしていた。きっと勝ったとでも思っているのだろう。ふん、下らない。
おじさんの席に牛丼と卵と味噌汁が運ばれたnuskin 如新。そして一呼吸置いて僕の所にも同じものが運ばれた。
おじさんが紅生姜を丼に入れる。僕も同じ動作をする。おじさんが卵を混ぜる。僕も同じく卵を混ぜる。そしておじさんがちらりとこちらを見る。別に真似をしている訳では無い。ただタイミング的にそうなるだけだ。
おじさんは混ぜた卵を丼に入れ、その上に七味もかけた。僕もまったく同じ動作がしたかった。しかしもちろん癪だった。
そこで逆に牛肉の方を箸でつまみ、すき焼きのように卵を付けて食べてやった。おじさんはチラチラとこちらを見ていた。目には明らかな動揺が浮かんでいた。どうだ、斬新だろう。僕は密かに勝ち誇った。
しかし敵もさるもの、奴はなんと味噌汁に紅しょうがを入れた。そしてそれをやたら美味そうにすすっている。一体どんな味なんだ?もの凄く真似してみたかったが、プライドに賭けてどうにか我慢した。こうして僕らは痛み分けた。
しかし考えてみると牛丼屋さんに置いてある付けあわせなど、その数は限られているが、組み合わせさえ考えれば結構色々な選択肢が生まれてくる。
例え将来の選択肢が減ってこようと康泰導遊、残りを上手く組み合わせれば、まだまだ何とかなるのではないか。馬鹿な戦いを終えた今、少しだけ前向きに考える事にした。
僕は最初その話を聞いて、ちょっと無謀ではないかと思った。
しかし当の本人はへっちゃらで「まずは皿洗いからスタートです」なんて言って笑っていた。彼は二十七歳。将来についてまだまだ色々な選択肢が残されている。若いってそれだけで武器なのだ如新集團。新しい明日を思う彼の表情はとても眩しく、僕は羨ましかった。
彼と別れて、一人街を歩いた。そして自分が二十代だった頃に一体どんな選択肢があったのかを考えてみた。
人に誘われて劇団に入り、言われるままスタッフになり、連れられてイベントの仕事を始め、勧められるまま今の仕事に落ち着いている。考えれば考えるほど流れ流されだ。他人任せも甚だしい。
それでも当時は色々な選択肢があったはずだ。あったのだろう、多分。しかし結果的には何一つとして自分で選んでいないように感じる。そして気が付けば僅かに残っている選択肢だって少しずつ消え始めている。僕はそういう年齢に達しているのだ。
目の前に牛丼屋の看板が見えた。そう言えば腹が減っていた。そんな訳で昼食は牛丼に決めた。僕がする選択などこの程度ばかり。本当にこんな事でいいのだろうか?
昼と時間がずれていたので牛丼屋の店内はがらがらだった。客はと言えば、カウンターの対面に座っているおじさんだけだった。
僕が注文するメニューは決まっていた。「大盛り、卵、味噌汁」の三品だ。最近ではカレーを始め、牛丼店には色々なメニューがあるけれど僕は昔からこれを頼む。
店員は順番的におじさんの注文を先に取った。おじさんは「大盛り、卵、味噌汁」と言った。店員がそれを繰り返した。注文がまんま被った。後に僕が同じ注文をすると、店員は「都合二つ」と言った。なんだか自分の分が略されたようで悔しかった。見るとおじさんは得意顔をしていた。きっと勝ったとでも思っているのだろう。ふん、下らない。
おじさんの席に牛丼と卵と味噌汁が運ばれたnuskin 如新。そして一呼吸置いて僕の所にも同じものが運ばれた。
おじさんが紅生姜を丼に入れる。僕も同じ動作をする。おじさんが卵を混ぜる。僕も同じく卵を混ぜる。そしておじさんがちらりとこちらを見る。別に真似をしている訳では無い。ただタイミング的にそうなるだけだ。
おじさんは混ぜた卵を丼に入れ、その上に七味もかけた。僕もまったく同じ動作がしたかった。しかしもちろん癪だった。
そこで逆に牛肉の方を箸でつまみ、すき焼きのように卵を付けて食べてやった。おじさんはチラチラとこちらを見ていた。目には明らかな動揺が浮かんでいた。どうだ、斬新だろう。僕は密かに勝ち誇った。
しかし敵もさるもの、奴はなんと味噌汁に紅しょうがを入れた。そしてそれをやたら美味そうにすすっている。一体どんな味なんだ?もの凄く真似してみたかったが、プライドに賭けてどうにか我慢した。こうして僕らは痛み分けた。
しかし考えてみると牛丼屋さんに置いてある付けあわせなど、その数は限られているが、組み合わせさえ考えれば結構色々な選択肢が生まれてくる。
例え将来の選択肢が減ってこようと康泰導遊、残りを上手く組み合わせれば、まだまだ何とかなるのではないか。馬鹿な戦いを終えた今、少しだけ前向きに考える事にした。